健康診断のススメ

少し悲しい現実からお話させてください。

当院で治療を頑張ってくれていた子たちが、続けてお空に旅立ってしまいました。
こんな時は、悲しさとともに、ついつい考えてしまうことがあります。

「もっと早く病気に気付いてあげたかったなぁ」と

もちろん、ただ長生きすることが絶対正しいことだとは思っていません。
ですが、もし、動物が苦しんでいたことに気付くのが、かなり遅れてしまうとしたら悔しくないですか?

亡くなってしまった猫さんの一人は慢性腎臓病でした。
様子がおかしいと飼い主さんが気づいて、病院に連れてこられたのは、残念ながら慢性腎臓病としては末期の段階でした。
慢性腎臓病の段階はIRISのステージ分類で表現されます。IRISステージは全部で4段階あるのですが、亡くなってしまった子が病院に来られたのは、その最後の4段階目です。

もちろん、そんな状況であっても、少しでも状態が上がるように、治療の内容を飼い主さんと相談して、点滴したり、お薬を飲ませようとしてみたり、飼い主さんも手を尽くしてくださり、あれやこれや試してはみるものの、既に食欲も全くない段階です。
脱水がいっとき改善しても、目に見えて元気になるほどの変化はなく、徐々に弱っていき、結局亡くなってしまいました。
慢性腎臓病は猫さんの死因では常にトップの病気です。早期に発見して、腎臓機能の低下をくいとめることができれば、穏やかに生活できる可能性が出てきます。

動物病院には、日々いろいろな病気の診察や相談がやってきます。
病気の治療をする場所なので、それは当たり前のことなのですが、私は病気にならないための予防にも全力で取り組みたいと思っています。

先ほどの猫さんの腎臓病の話に戻ります。
IRISステージ4の慢性腎臓病というのは、腎臓の機能が残り5%を下回った段階ということです。
腎臓の機能がここまで落ちてしまうと、なかなか気持ち悪さも取れないでしょうし、食欲も上がりません。口から食事を摂れなければ、すぐに脱水が進んでしまいます。
もし、同じ慢性腎臓病が診断されたのとしても、その機能が33%くらいまで落ちた程度(IRISステージ1)の段階で見つけてあげられれば、これ以上腎臓が悪くなっていくのを食い止める、悪くなるスピードを遅くする治療ができると思います。

とはいえ、IRISステージ1の慢性腎臓病の犬や猫を、具合が悪いと見抜ける飼い主さんはほとんどいないと思います。
なぜなら、その段階では、おしっこが少し薄くなり、尿量が少し増えたかもといった程度の変化しかありません。動物はいたって健康に見えているはずです。

今回お話した慢性腎臓病は、一つの例です。

健康診断を受けているわんちゃんは、徐々に増えてきました。
今年の春には、フィラリア予防の採血時に健康診断を受けてくれる子が多数いました。
ですが、それと比べてしまうと猫ちゃんの健康診断の受診率はかなり低いのが現状です。
おそらく、猫ちゃんを病院に連れてくること自体、ハードルがとても高いのでしょう。
ただ、そこを頑張って一度連れてきてみませんか?

当院ではこの9月、4月のわんちゃんの血液健診に倣って「猫ちゃんのための血液だけの健康診断」を実施しています。
採血だけでも、頑張ってみてはいかがでしょうか。
さらに、おしっこを採ってきてもらうと、とても意味があると思います。

もし、どうしてもワクチンの時くらいしか、病院に来れない猫ちゃんは、その数少ない機会に健康診断を検討してみてはいかがでしょうか。
ぜひ、積極的に検討してみて欲しいです。

犬、猫に関わらず、健康で長生きできる子たちが増えていくことを、願っています。

健康診断については、当院までお問い合わせください。

みやペットクリニック
052-223-0011
院長 宮本